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世界初のレンジファインダー式デジタルカメラ エプソンRD−1

RD-1


 世界初のレンジファインダー式デジタルカメラ、エプソンRD−1が3月11日に 正式発表された。これに先立って開催された内覧会で実物を手にする機会を得たので、今回は速報という形でレポートしたい。

 

エプソンとコシナが協同開発

 このカメラはセイコーエプソンとコシナが協業で作り上げた製品である。これはデ ジタルイメージプロセシングの分野で高い技術を誇る反面、カメラ作りの経験が浅いエプソンが、カメラメーカーとして長い歴史を持つコシナに協力を仰いだ結果にほかならない。エプソンとコシナは本社が長野県内にあることに加え、コシナは以前からエプソンに液晶プロジェクターの光学系を提供してきた。コシナがレンジファインダー機の技術を有していることだけでなく、この当たりの要素も今回の協業につながったものと考えられる。もちろんこれまで銀塩カメラを中心にカメラづくりを行ってきたコシナにとっても、渡りに舟だったことは言うまでもない。

 

アナログ操作に徹したデジタルカメラ

☆「フィルムをCCDに変えただけ」を基本にし、アナログカメラの操作性・匂いを極力残した開発を行う。
 これがRD−1の開発コンセプトである。確かに実物から受ける第一印象は銀塩フィルムを使うアナログカメラそのものである。特に背面の液晶パネルを裏返しにしてしまうと、デジタルカメラの気配が見事に消え失せる。
 特筆すべきはダイヤルとレバー操作に徹した操作系だ。特にフィルムを使わないデジタルカメラであるにも関わらず、このカメラには巻き上げレバーがある。これはシャッターのチャージ用でモーターを内蔵しないことにこだわった結果であるという。フィルムを巻き上げる必用がないので操作角は90度とベッサRに比べるとかなり小さい。
 シャッターダイヤルは大型であるうえに前側にオーバーハングしているので、人差し指1本で操作できる。ファインダー内の露出表示はLED式だが、横一列にシャッタースピード表示が並びアナログ表示を意識したデザインになっている。以上の2点はライカM5にそっくりで、これは完全にライカM5を意識した確信犯である。
 さらに感心したのは巻き戻しノブのように見えるジョグダイヤルだ。これはLCDパネルで画像を確認する際などに利用するが、通常の状態と1段引き出した状態では利用できる機能が変わるようになっている。ノブの形状がライカM3そっくりなので、思わず引き出して使いたくなるが、これを見越した心憎い演出である。
 ボディ上面にある時計の文字盤のような針式インジケータも、このカメラの大きな特徴と言える。昔、高級コンパクトカメラのニコン35Tiが同様の針式表示を採用していたが、RD−1はデジタルカメラなので表示内容がガラリと変わっている。またこのインジケータにはセイコーの高級腕時計ブライツシリーズのモジュールが使われている。針式というと耐ショック性が心配になるが、腕時計の使われ方はカメラどころではない。その点でも安心して使用できる。
 またこのカメラにはUSB端子やACアダプター用などソケット類がまったくない。そのためボディ外部に目障りなゴム製のキャップ類が一切なく、とてもすっきりした印象を受ける。これは撮影時の快適さを優先させた結果にほかならない。最大公約数を狙っていない設計思想が強く感じられる部分である。
外観はフォクトレンダーベッサR2とそっくり。ボディシャーシはアルミダイカスト、上下カバーはマグネシウム合金製だ。
向かって右側、巻き戻しノブのように見えるのはジョグダイヤル。
アナログ式インジケータにはセイコーの機械式クロノメーター,ブライツのモジュールが使用されている。この時計は10万円以上もする高級腕時計だ。
巻き上げレバー(正式名称はチャージレバー)はシャッターのチャージ用。巻き上げ角は予備角30度、チャージ角90度と小さい。

シャッターダイヤルはライカM5のように前面にオーバーハングした形になっている。AEの位置にダイヤルを合わせると絞り優先AEになる。ISO感度はシャッターダイヤルを持ち上げてをセットする方式だ。

アナログ式インジケータ外周部の目盛りは撮影可能枚数表示で、いちばん長い針が残数を指す。撮影できる枚数が少なくなるほど目盛りが細かくなる。

左側の天気図のようなマークが付いた目盛りはホワイトバランス表示。表示が小さいうえ、慣れないと分かりにくい。
右側のR/H/Nの目盛りは画像サイズを示す。
下のE/F目盛りはバッテリー残量表示。

 

 

新開発の等倍ファインダー
 RD−1の距離計には、新設計の光学系が採用されている。基線長はベッサRシリーズと同じ38・2ミリだが、ファインダー倍率が等倍なので基線長がそのまま有効基線長になる。この結果従来0・9メートルだった最短撮影距離を0・7に短縮。最短撮影距離が0・7メートルのライカ製レンズでも、すべての距離で測距ができるようになった。またブライトフレームは、28、35、50ミリレンズ用の3種類を内蔵しているが、画角はCCDのサイズに合わせ狭くなっている。
 ここで最も気になるのが距離計の精度だ。RD−1の有効基線長の長さは従来に比べると長くなったとはいえライカM3の62・3ミリに遙かに及ばない。果たしてどの程度の実力を備えているのだろうか。実は発表会の案内を受け取ってから、ずっとこのことが気になっていた。そこで大口径レンズを会場へ持ち込み展示されたカメラに装着。絞り開放で最短撮影距離で撮影してみた。もちろん会場に用意されたカメラは完成品ではないし、撮影した画像もボディのLCDでしか確認できなかったので、かなり乱暴なテストであることは承知の上だ。結果は想像以上。撮影結果を持ち帰ることかできなったので、映像をお見せできないのが残念だがRD−1の測距精度が高いことに驚かされた。なお余談になるが、RD−1に利用された距離計はコシナが銀塩カメラ用として開発していたものであるという。

私が距離計の実験用に持ち込んだキヤノン製50ミリF0・95。このレンズは国内で発売された最も明るいレンズだ。
本来はキヤノン7専用だが、ライカMマウントに改造してある。最短撮影距離の1メートルで撮影したところ、ピントはしっかり合った。このほかズミクロン90ミリF2、ズミクロン50ミリF2でも試してみたが、結果は同様だった。
なおこのボディの商品名は黒テープで隠されている。

 

ライカMマウントを採用
 レンズマウントにはEMマウントいう名前が付けられているが、実質的にライカMマウントと同じである。したがってライカMマウントレンズだけでなく、ライカスクリューマウントレンズもMカプラーを使えば装着できる。ただし縦走りシャッターの遮光性を高めるため二重幕シャッターを採用しているので、後部がマウント面から20・5ミリ以上飛び出しているレンズは装着不可能。沈胴式レンズも沈胴させることはできない。この点についてはベッサRシリーズと同じと考えて良いだろう。
 なおライカ用レンズといえば70年以上前に製造された古い製品も含まれる。このような古いレンズを最新のデジタルカメラに組み合わせると、どんな映像が撮れるのだろうか。しかし、この点については実際に撮影しみないと何とも言えない。いずれ実写できるカメラが届いた段階で再度レポートしたいと思う。
マウント

マウントはライカMマウントで、ほとんどのライカ用レンズが装着できる。コロによる距離計連動機構もライカとまったく同じだ。
ファインダーは実像式で倍率は等倍。距離計の有効基線長は38・2ミリ。

デジタルカメラとしての機能について

 RD−1に採用されているCCDのサイズは、23・7×15・6ミリ。いわゆるAPS−Cと呼ばれているタイプだ。したがって35ミリフルサイズに比べると画角が狭くなり、焦点距離を1・53倍すると35ミリ判の画角に換算できる。有効画素数は6・1メガ。現在発売されている一般的なレンズ交換式デジタル一眼レフと同じ画素数だ。
 画像処理エンジンにはエプソンがプリンターで培った技術を結集。特に顔料系インクを使用したエプソン製プリンターを使用した場合に豊かな階調が再現されるようになっている。画像記録サイズは3008×2000、2240×1488の2種類。もちろんRAWモードも備えている。
 RD−1のスタイルはどこから見てもアナログカメラだが、背面のLCDパネルを表に向けると一気にデジタルカメラらしくなる。またLCDの左脇にはプッシュボタンがタテに5つ並び、詳細な設定を行う方式である。ただし画像拡大の操作などは階層が深く、改善の余地があるように思われた。
ボディ背面にあるLCDパネル。このパネルは回転式で裏返すことができる。
LCDパネルを裏返した状態。中央には焦点距離の換算盤がある。ライカMシリーズを意識したデザインになっている。


黒テープに隠された謎

 商品名のRD−1は、レンジファインダー・デジタル・1st.の意味だ。だが会場に用意されたカメラの商品名の部分は黒いテープで隠されていた。これは発表会の直前まで名前が決まらなかったためだという。実はフォクトレンダーベッサデジタルという名前を付けるべく商標権を持つリングフォト社と話し合いを続けていたが、結局折り合いが付かなかったとのこと。もう少し詳しく説明すると、西ヨーロッパでフォ クトレンダーの商標を使うことが許されなかった。つまり西ヨーロッパを除けば、日本も含めてフォクトレンダーの名前を冠することができたが、エプソンとしては全世界統一ブランドで発売したいという強い意向があり、今回は見送りになったのだという。さすがに説明員の目の前でテープを剥がす勇気はなかったが、恐らくテープの下にはフォクトレンダーのロゴが隠れていたたに違いない。いずれにしてもエプソンとしては、フォクトレンダーブランドに非常に魅力を感じており、今後も交渉は続けるらしい。したがって、もし次の製品が出るとしたら、フォクトレンダー名になる可能性が高い。


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