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 EOS以前のキヤノンの一眼レフ用交換レンズと言えば、FD、NewFDレンズをすぐに思いつく。しかしそれ以前にもキヤノンR、キヤノンFLという交換レンズ群があったのである。特にキヤノンFLは、FDレンズ群の母体となったレンズ群だ。キヤノンFDに比べると影は薄いが、なかなか実力のあるレンズが揃っていた。

 

※写真をクリックすると大きなサイズでご覧いただけます。

 

02

現在手元にあるFLレンズ3本。キヤノンFXの「ポピュレール」キヤノンFPにはFL50ミリF1.8II。左側にはFL28ミリF2.8。右にFL35ミリF2.5。

 

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FL35ミリF2.5はR時代から光学系が変わらないようだが、出現当初は大口径の部類の広角レンズである。キヤノン独特の薄枠フィルターと、よくはずれてしまう専用フード。

 

 キヤノン一眼レフは1971年にキヤノンF-1が発売されるまで、ニコンやペンタックスなどに比較するとどことなく地味な存在だった。ペリックスなど話題づくりでは派手なところはあったが、世評では今一歩の感が深かったのである。キヤノンの一眼レフの歴史はキヤノンフレックスから始まるのだが、レンズマウント、特に自動絞りなどが何度か変更されている。現行のEOSマウントは別にしても、R、FL、FDとマウントの形状は同一でも、自動絞りやレンズ情報のインターフェースがそれぞれ異なっている。度重なるレンズマウントの改変はユーザーにも不信感を与えるのは当然で、こんな所にもキヤノン一眼レフが低迷する要因があったように思われる。個別のモデルの仕上がりや感触はキヤノンという会社らしい丁寧なもので、たとえばスーパーキヤノマチックと言うRシリーズの自動絞りはとても滑らかな作動をするメカニズムであったし、キヤノンFX、FTなどのシャッターの切れ味はニコンなどよりも軽快だった。このように各々のカメラに触れてみると決して悪くないのだが、交換レンズやアクセサリー群の幅がニコンに対してはF1出現までははっきりと狭く、一眼レフをシステムの拡がりとしてとらえるユーザーにとっては物足りなさを感じざるを得なかった。

 

 私自身もキヤノン一眼レフの本格的な便用はキヤノンF-1からだが、それ以前にキヤノンFTQLとFLレンズをしばらく使っていたことがある。ボディは当時流行のブラックでレンズはFL50ミリF1.8の前期タイプとFL100ミリF3.5の2本だ。キヤノンFTQLのボディは現在では若干大きさを感じさせるけれど、当時としてはごく普通のサイズである。巻き上げのトルク感は均一で、ニコンFなどよりスムーズだ。シャッターの感触などはすこし残響音はあるが前述のように滑らかである。絞り込み式の測光はイラ立つことはあったが、全体に軽快な作動のカメラであることはすぐに理解できた。

 もうひとつカメラ好きとして感じたことが、FLレンズ鏡胴の独特の質感とデザインの印象だった。これは好みの問題もあるので軽々に言うことは難しいが、私の場合、FLレンズのデザインを美しいと思った。少なくとも凝ったつくりの鏡胴であることは確かだろう。全体に艶のある黒色の塗りで、絞りリングとマウントリングが梨地の銀色だ。文字と数字は白とオレンジ色で印刻され、全体に品のある華やぎといったものを感じさせる。凝ったつくりと書いたのは、黒の鏡胴には非常に細かな機械加工の挽き目を残して、その上に塗料をのせているからだ。そのために、単純なペイントの艶とは異なる質感の表現になっている。鏡胴に軽く爪を走らせると、表面の施条の波うちを感じることができる。少々フェティッシュな話になってしまうが、ライカのM2、M3の時代のクロームメッキのサテンのような手触りの魅力を語ることと似ていなくもない。塗りのFTQLブラックボディと組み合わせると、目立たなくするための黒色のカメラが逆に随分と派手になる。

 

※写真をクリックすると大きなサイズでご覧いただけます。

 

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キヤノンT90につけて使うことが多いFL28ミリF3.5。FLレンズとしては後期の製品である。長い間、キヤノンFLレンズとしては後期の製品である。長い間、キヤノンFLレンズには19ミリと35ミリの中間の焦点距離のレンズが用意されていなかった。エリマリート28ミリF2.8が出現するまでのMマウント広角レンズのようである。

 
 

 キヤノンFTQLを使っていた時にはニコンも同時に使っていたので、ニッコールと、使用していたレンズは少数であるけれどキヤノンFLの違いも当然感じられた。当時のフィルム、エクタクローム系のフィルムの印象では、おおまかなところニッコールは黄色く、キヤノンは青くなりがちだったように思う。もっとも構成枚数の多いFL55〜135ミリF3.5なんていうレンズは例外である。そのころキヤノンではスペクトラコーティングと名付けて、カラー撮影に対して充分な配慮をしていると宣伝していたが、基本的なカラー再現には濁りが少なかったようである。シャープネスはニッコールとそれほど違いはなく、後から出現したレンズほどシャープだと思われた。たとえば定評のあったオートニッコール28ミリF3.5よりもキヤノンFL28ミリF3.5のほうが線が細かい。FLレンズ群が展開され出した頃の話題のレンズにはFL19ミリF3.5Rというレトロフォーカスタイプの超広角レンズがあったが、FL50ミリF1.4 IIがでる頃からキヤノンは交換レンズ群の充実に力を入れ始める。FL55ミリF1.2ALやフローライトレンズの300ミリF5.6、500ミリF5.6が登場しだすと、ニコン一辺倒だった各分野のプロがキヤノンに関心を持つようになってゆく。もうすぐキヤノンF1が発表される、1960年代末のことだ。そしてFDレンズの時代になるのだが、私もキヤノンF1を使い出した当初、まだFDになかったレンズ、FL200ミリF3.5というすこし明るいレンズをキヤノンF1につけて使ったりしたことがあった。木の緑を背景にしてセーラー服姿の女学生をモデルにしたB全サイズのポスター用ポートレートだった。コダクロームを使ったが、やはり葉の緑の発色が少しシアンに傾いて仕上がった。

 現在ではほとんどのFLレンズを手放してしまったけれど、残った数本(広角系)をキヤノンT-90なんかにつけてたまに遊んでいる。やはりFLレンズの艶めく鏡胴は美しい。

 
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キヤノンT90・FL28mm F3.5・絞りF8 1/2・1/125秒 フジROPIII

線も細かくシャープなレンズなのである。そしてシアン味が強くなる場合があるけれど、すっきりとした軽快な発色がこの時代のキヤノンレンズのひとつの特長だ。タル形の歪曲が少々大きいレンズではある。

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