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第7回タイトル


ライカMP6

コンタックスRTSII

ポルシェデザインを採用した初代RTSとほぼ同様のデザインを踏襲。より完成度を高めたカメラであるが、頻発した故障には泣かされた。後のRTSIIIは完成度の高いカメラだが、重量級ボディだからスタジオ撮影以外にはあまり持ち出すことはない。

 

「ツァイス」と聞いただけで色めき立ち、心ここにあらずという人がいるらしい。たかが写真レンズごときに絶対的な信奉を持つ信者が数多く存在し、21世紀の今もなお確固たる地位にあるというのは、とてつもなく凄いことである。
 私個人は、ハッセルブラッドは20年以上の使用経験を持つので、ツァイス歴も長いのだが、旧レンジファインダーコンタックスとか、ヤシカ(現京セラ)との提携以降のコンタックスRTSシステムなど、35ミリカメラ用のレンズの本格的なツァイス経験はここ10年ほどしかない。中判カメラはフォーマットサイズが大きいから、レンズ特性を細かく検証することは少なかったけれど、35ミリ判は引き伸ばし倍率が大きいから、より高性能レンズが求められ、愛用者も多いから、蘊蓄を語る人も星の数ほどになる。したがって、レンズによって、さまざまな評価がある。

 

京セラ株式会社 光学機器製品情報ページ http://www.kyocera.co.jp/prdct/optical/

ツァイスの神話

 「神話」とも言える、こうした描写特性の論評というのは、その話が大きくなればなるほど、個人的にはかなり疲れるというのが正直なところである。
 解像力が高く、開放絞りからコントラストが優秀で色再現が抜群であるレンズを使ったから、良い写真が撮れるのだという「夢」を持つことは、決して悪いことではないとは思うが、もともと根本的に才能が欠落している私なので、実はどのようなレンズを使っても、出来上がる写真にさほど変化はない。これを逆説するなら、実際に出来上がる写真の内容にレンズの特性が、何ら関係ないのならば、細かなレンズの蘊蓄を語っても、とくに罪はないのではないかとも思っている。これは日頃のライター仕事としての開き直りのようなものである。性能の高いレンズで良い写真が撮れるとなれば、私はレンズにいくらでもカネをかけるであろう。
 初代コンタックスRTSが登場した時、今はない『カメラ毎日』のメカニズム記事だったと思うが、新川幸信先生が、暗室のバットの薬液の中に浮かぶコンタクトプリントを見ただけでツァイスと他のレンズの違いがわかり、これは凄いレンズだと書かれていて、とても驚いた記憶がある。話は続いて、引き伸ばしたプリントではシャープで階調再現も凄いのに、ネガをルーペでみると細かなところまで解像されていないのでがっかりしたという記述もあった。この記事を読んで、私はかなり混乱したと同時に、像が解像されていないのに、なぜプリントではシャープなのかということを、まったく理解することができなかったのである。

解像力かコントラストか

 30年前には、カメラ雑誌のレンズテスト評価というのは、チャートを撮影した解像力数値が絶対的なものであって、MTFの記述もあったものの、あまり注目はされていなかったようだ。ちなみに『アサヒカメラ』の「ニューフェース診断室」だったと思うが、プラナーT*50ミリF1.4は開放からコントラストが高いから、夜間撮影では暗部が潰れ気味になる、などという、これも今では理解しがたい評価もあった。
 先のコメントにはまだ続きがあって、トリミングを多用するような人はツァイスレンズを使うのには向いていないという意見もあったはずだ。これはすなわち解像力は低いが、コントラストが高いので写真的な見栄えが良いのではないかという意味にもとれるわけで、混乱にさらに拍車がかかることになった。
 それでは国産のレンズは硬くて解像力が優れるから、トリミングも平気だなどいう見解があってもおかしくはないが、もともとフォーマットサイズの小さい35ミリ判を極端にトリミングしてしまうこと自体、反則ワザであることは言うまでもない。

ツァイス教への入信

 解像力なのかコントラストなのか。写真的描写特性に最も適した能力をもつレンズというのはどういったものなのか、こうした論議は実は現在も続いていたりするのである。
 私がツァイスレンズに非常に関心を持ったのは、写真家の築地仁先生が、モノクロフィルムの銘柄をコダックのトライXからTマックスに変更するにあたり、どうもニッコールレンズではこれが合わないと思うようになって様々なメーカーのレンズテストを試みたところ、ツァイスレンズがTマックスフィルムにぴったりだったという話をお聞きしてからである。

※写真をクリックすると、
 大きなサイズで御覧頂けます。
ライカMP6-2

T*の刻印は、レンズ名同様にすでにブランド化されており、これがあるかないかで大幅に価値が異なる。ハッセル用のツァイス初期タイプレンズなどではT*になっているか否かで、中古相場が大幅に異なるのは周知のとおりである。

 

 個人的にはフィルムの種類によって、レンズの種類を換えるなどという器用なことはできないのだが、これも描写特性にこだわる写真家にとっては大きな要件ということになるのであろう。
 ツァイス教に入信するのはそれなりのお布施が必要であるから、これにはかなり迷った。
 仕事だのプライベートだのの区別があまりつかない私の仕事だが、それでもそれなりの交換レンズを揃えないと、商売はできない。機構的には時代遅れのライカを購入するという愚行を、さんざん犯しているのにもかかわらず、このAF一眼レフ全盛時代に、MFのコンタックスシステムにまたしても、大枚をはたくというのは機材貧乏生活から抜けだせないことを意味しているわけで、職業カメラマンとしては失格である。
 結論から言えば、ツァイスレンズの描写特性を知るというのは決して無駄使いではなかった(と信じたい・笑)。


ツァイスの個性

 個人的な評価をするならば、ツァイスレンズというのはいずれもそれなりの個性があるという見方をしている。つまり、決して国産万能レンズのように、ニュートラルではないということである。
 数値性能的には、おそらく悪いのではないかと思えるものも実は散見されるから、ツァイスレンズ全ては万能なものではなく、自分に合った個性の一本を見つけることが、ツァイスレンズのチカラを引き出すことであると感じたわけだ。これは性能を語るというよりは食べ物の好み、もっと細かく言えば鮨の好みみたいに好き嫌いを論じるしかないのである。

ライカMP6-2

RTSシステムのプラナーT*50ミリF1.4とローライフレックスSL35用のプラナーHFT50ミリF1.4レンズ

外観は似ている。レンズ好事家は、両者の描写特性の違いなどに執着するが、私の印象ではほとんど同じである。独製、日本製の差というのも、まったく同じだと断言してよい。

 

 たとえばツァイス信者のほとんどが所有しているであろうプラナーT*85ミリF1.4など、現代のレンズ性能に比べれば、はるかに劣るとしか思えない性能である。一般にこの焦点距離は、ポートレート撮影に向くとされ、それぞれのメーカーが、力を入れているものであるが、プラナーの場合は開放の描写特性を見てもそれほど感心するものではなく、どことなく甘くレンズの収差が感じられるものとなっている。もっともポートレートに向くレンズであるから、極端にシャープなレンズでないほうがよいという意見もあるだろうが、現代の85ミリレンズの中には、開放でピントの芯がきっちりありながらも、線の再現が優しいレンズというものも存在する。
 周知の通り、写真とは鮮鋭性を競うための競技ではないわけだから、シャープであることが写真レンズの絶対的要件ではないはずである。プラナーT*85ミリレンズで感じるのは、文章ではうまく表現するのは難しいけれども、とあるフィルムを使って、とある光線状態の、とある撮影距離の、とある絞り値において、絶対的個性を放つという魅力的な部分があるに違いないと考えているのである。
 これは企業秘密であるから(笑)みなさんには開示しないけれど、ツァイスレンズをオイシク使うには、それなりの要件を満たす場所を見つけださねばならないということは言えるのである。



ドイツ製VS日本製

 ヤシカと提携し、多くの種類のツァイス交換レンズが登場したわけだが、その後、どういうわけかレンズの製造刻印をみると、年を追うごとにドイツ製から日本製に移っているものも多くなってきている。おそらくはコストの問題だろうが、現在のツァイスは、レンズの自社設計製造というよりも、ツァイスブランドの知的財産権を使って、うまく商売しているようなところもあるから、言わば人のふんどしで相撲をとっているようなところがある。
 ツァイス信者にはこれも許せないことらしく、ドイツ製と日本製のレンズの描写特性の違いなどという記事も、過去、とあるカメラ雑誌で読んだことがある。
 はっきり言ってしまえば、この差というのは妄想である。
 ツァイス基準で、設計と製造が行われ、まったく同じ要件で製造されたレンズに生産国べつの違いがあるほうがおかしい。仮に違いがあるとするならば、レンズ自体の異常を心配したほうがよいのではないかと思う。こうした些細な刻印の違いでも中古相場では異なった認識がされるのは、日本くらいなのかもしれないがじつに滑稽である。
 同時に、ツァイスからライセンス生産が許された、ローライのツァイスレンズと本家ツァイスレンズの描写に違いがあるかどうかを本気で研究している人もいるらしい。T*とHFTコーティングの差が描写特性にどのように影響するかということなのだろうが、正直、硝材の中に鼻クソを落としたものと、通常の硝材を使ったものとの違いを探るようなもので、こらもあまりにバカバカしいことである。

ツァイスを生かすカメラボディ

 さて、ツァイスレンズの魅惑を引き出す暗箱すなわちカメラボディのほうに話を移すことにする。
 ツァイス教に入信した誰もが、レンジファインダー時代の旧コンタックス信者から攻撃を受けなければならなくなる。これは宿命なのだ。(現在は京セラだが)ヤシカと組んだコンタックスを使っている限りは、本当のツァイスレンズの味はわからないなどと罵られるのである。これだけで、私などは改宗したくなってしまうほどなのだが、真面目な私はコンタックスIIaを入手し、使ってみることにした。

ライカMP6-1
ベッサR2C+ツァイステッサー50ミリF3.5
この組み合わせは、モノ的な魅力に溢れる。カメラの取り回しはベッサR2などと同様だから、スムーズである。初心者にもおすすめできるセットである。

 しかし、どうもカラダに合わないのである。しっかりとした作りの良さはさすがにコンタックスなのだが、一連の操作感触にライカ的な優美さがないのが問題である。真面目すぎてツマラナイ奴みたいなところがあるわけだ。コンタレックスにも一時手を出したが、これも機能以上にわざと重くしたのではないかと思えるほどの取り回しの悪さで、たとえば街歩きのお伴のためには、まったく適していない。モトをとるために仕事に持ち出しても、両者ともに、相手から奇異な目で見られてしまうようなところがあるから困ってしまう。
 カメラの操作感触に不満があると、真面目に写真を撮らなくなるのは私の性癖であるが、昨年、コシナ・フォクトレンダーからベッサR2Cが登場したことで、旧コンタックス用のツァイスレンズも最近は真面目に使うようになってきた。カメラの取り回しの良さは創造力を刺激するのである。カメラの使い勝手は、「ライカ的」だから、ストレスなく使うことができるのも魅力である。
 古いツァイスレンズは現代でも立派に通用する描写特性を持ったものばかりで、とくにビオゴン21ミリや35ミリレンズの力強さには感激した。これらの描写特性は、昨年双葉社から発売された「ベッサR2S、R2C」のムック本に詳しい。


 

AFよりもMFコンタックス

 京セラのコンタックスのほうは、ついにAF化がなされ、Nシリーズと呼ばれ、フルサイズのデジタル一眼レフカメラも登場するなど、新しい波に乗り遅れまいと気炎を吐いているようだが、現時点では私はNシリーズは一切使用していない。これらも実は私のカラダに合わないのである。Nシリーズのツァイスレンズも力の入った設計、製造がなされていることは間違いないが、ボディがレンズに負けている、まだついていっていないという感じがする。Nシステムにも、しっかりとしたフラッグシップモデルが必要だと感じる。
 切り離されたMFのコンタックスも最近は人気がないようだが、中古市場ではかなり買いやすい値段になっているから入手のチャンスである。Nシリーズ登場による人気低落のためだろうが、「ヤシコン」などと揶揄されようとも、逆にその存在感を高めているのが面白い。

ライカMP6-2

ヤシカFX-3 スーパー2000

OEM機ではあるものの、完成度は高いカメラである。これでプレビューボタンがついていれば完璧とも思える。テッサーT*45ミリとの組み合わせは、街中では最高のパフォーマンスをみせる。

 

 人気がないといっても相変わらずRTS系のフラッグシップ機は、いずれもそれなりの値段が維持されているようだが、最近私が好んで持ち出すのはRTSIIIよりも、ヤシカFX-3スーパー2000だったりする。京セラはMFコンタックス存続のためにRXIIを出したが、これはどうも、古いコンタックスユーザーのために仕方なく製造した、という感が否めない。
 メカニカル作動のしっかりとしたカメラを残していくことこそ、京セラコンタックスの義務とも考えるのだが、S2やS2bを無理して買うよりも、廉価なヤシカを使っているほうが、よほどコンタックスブランドに流されることなく、レンズの描写特性をしっかりと認識している写真表現者を気取ることができるように思えるのである。
 
 
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