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AFマイクロニッコール60mmF2.8DつきのニコンF4S。じつに厳つい感じだが、曲面の軟らかさが救いとなっている。金属製ボディでは出来ないワザを意図的に狙ったということもあるのかもしれない。バッテリーパックを換えることで、その形も変貌するが、基本機種はこのF4Sであろう。
※写真をクリックすると、大きなサイズで御覧頂けます。
 ニコンフラッグシップ機の4番手として登場したニコンF4。フラッグシップ機としては初の本格的なAF機構を搭載。登場時の評判とは裏腹に現在では不人気なカメラに属している。はたして、その存在意義は今でもあるのか。


デジタル時代のレンズ選択

昔ながらのシャッターダイヤルが存在しているというだけで、感激してしま う私である。右側は露光補正ダイヤルだが、通常のAFカメラというのはこの操作がやりづらい。しかし、F4の場合は指一本で操作できるところが便利だ。
 
フィルム巻き戻しクランク。AF一眼レフには不似合いな感じがするけれど、仮に何らかの事故が生じた場合でもフィルムを取り出すことができるという安心感をもたらす。F5にも巻き戻しクランクが「残された」のはF4の機能を踏襲したということなのであろう。
 このところデジタル一眼レフ、ニコンD70をよく使っているのだが、クラシックなニッコールレンズはデジタルイメージング表現にも耐えられるのか?という質問を多くいただくようになった。
 この回答はその人を見て・・というのは冗談だが、はっきりと明確に答えづらいことは確かである。
 銀塩、デジタルにかかわらず、古いレンズが使える、使えないの判断をする要素というのは、そのレンズにシャープネスであるかないか、ということと、ほとんど同じ意味である。銀塩、デジタルともに、スチル映像というものは、あくまでも肉眼で見たままの光景をいかに鮮鋭に写すことができるか、ということを目標において技術発展してきたからだし、背景とか手前のボケ味云々などということは二の次になるのだ。
 ボケていたり、色収差が出たり、周辺が流れたり光量落ちするというのは、レンズの欠点でもあるわけだが、写真の趣味が嵩じてくると、こうした欠点が、もしかしたら表現に転換できるのではないかとも考える。
 実際にはこれはかなり難しいのだが、良い効果が出てくれれば楽しみのひとつとなるわけだ。もちろん、これはあくまでも偶然の産物なのであるけれど、これがまた写真というものなのだ。
 しかし、あくまでも緻密な風景写真を製作したいとか、マクロ撮影時に針でついたほどのシャープネスが必要だ、という人にとっては、クラシックレンズの使用に興味を持つ必要性はまったくない。
 私自身、当初は「デジタル対応」などと表記してある最近のレンズ性能には逆に疑心暗鬼だったところもあるのだが、実際に使用してみると、性能的な裏づけはあると思えるようになった。明らかにクラシックレンズを使用するよりも画像の質に余裕があるのだ。
 これはシャープネスに限らず、色再現、階調再現、口径食、あるいは逆光時の再現特性などにも及ぶ。新旧のレンズ性能の差異は広角レンズになるほど顕著になり、大きく開いてゆく。依頼仕事や、緻密な画像を必要とする場合には、とてもではないけどクラシックレンズを使おうと考えることはない。
 先に述べたレンズの欠点というのは、デジタルでも露呈するので、銀塩写真と同様に楽しもうと思えば出来なくはない。しかし、デジタルの開発途上ゆえの未成熟さがそうさせるのか、多くの人はデジタル画像の質に非常にウルサイ。とにかく最上級の画質を求めるようになってしまうのである。このあたりはココロの余裕がないという感じもする。
 問題があると感じれば、Photoshopを使って、その欠点を封じ込めたり、軽減させることを考えたりする。ただし、これは決して邪道な行為ではなく、デジカメ愛用者ならばごく普通のことであろうと思う。
 ところが、画像処理をつきつめて行くと、無理に古いレンズを使用して、解釈のつかない曖昧な「味」を追求するなどということはさほど意味をなさないことを、後に知ることになる。つまり、欠点を封じ込めてしまうという行為は、最新レンズの描写性能を画像処理によって追求してゆくことと同じことになってしまうからである。
 この「曖昧さ」というのは、やはり銀塩フィルムによる表現のほうが絶対に得意なのではないかと、いまだに考えているのである。

新旧レンズの互換性に優れるF4

F3AF用のAFニッコール80mmF2.8Sを装着した。AFの作動音はほとんど無音に近く、使い勝手はよい。このレンズの他にAF ED200mmF3.5Sレンズもある。これらのレンズがF3AFの他にAFで使用できるのは、F4の他F-501しかない。これらのレンズは試作品のようなものだ。 Aiニッコール35mmF2Sを装着。Sタイプレンズでは、多分割のマルチパターン測光を可能としている。通常のAFレンズとほとんど変わらず、便利に使うことができる。ただしシャッター速度優先、プログラムAEのモードは残念ながら使用できない。 Aiニッコール45mmF2.8Pレンズ。レンズはMFであるが、CPUが内蔵されているので、AEの全てのモードを使用することが可能である。パンケ−キレンズの相性があるがさすがにF4相手だとそのミスマッチングさがおかしい。
AF-Sニッコール28-70mmF2.8D ED SWM (IF)レンズを装着した。このレンズの場合は全てのAF、測光モードが使用可能。時代的には先進のレンズだが、F4で対応できていたのは素晴らしい。最初から未来を見据えた設計となっていたというのが凄い。
ニッコールオート50mmF1.4を装着。このレンズはAi改造してあるため、開放測光が可能だが、改造前の旧レンズもマウントのAi連動ツメを跳ね上げることで、装着することができ、しかも絞り込み測光によって使用することができる。レンズのデザインはさすがに古い感じだが、なぜかF4との相性はいい。
ニコンレンズシリーズE 35mmF2.5。ニコンEMと同時に発表されたMFレンズ。OEM製品といわれている。「ニッコール」名のない初の一眼レフ用交換レンズとなった。機構的にはSタイプレンズと同一だからマルチパターン測光を使用することができる。

D70ではCPU内蔵のレンズでないと、メーターがまったく動かない。不変のFマウントと呼ぶくせに、いささかお粗末にも思える。撮影画像の確認ができる余裕があれば、さほど問題は感じないのだが、何もせっかくデジタルカメラを使っているのに、撮影時から何もフィルム時代に帰るような面倒なことをする必要はないのではないかと考える人も多くいるように思われるのである。
 完成までの面倒な手順をあえて踏む、ということを楽しもうとするなら、デジタルであれやこれやパソコンの前で奮闘するよりも、最初から銀塩フィルムの処理やプリントのほうを思いきり手をかけて行ったほうが、意味があるようにも思うのである。趣味の世界はもっとまったりとした時間を作って行いたいものだ。
 そこでニコンF4である。こうした古いAF一眼レフカメラは、年を経るごとに価値がなくなってゆくのものであるが、F4の場合はまだ存在意義は高いと個人的には考えている。この理由は、全ての時代のニッコールレンズとの対応力が抜群に高いボディだからということなのだ。
 まあ、実を言えば、前回のニコンFではないけれど、メーターの作動の可否などということは本当は大した話ではない。シャッター速度と絞り設定を確実に行うことができれば撮影はできるのであるから、フィルムでもデジタルでも、きちんと撮影することができる。
 それでもこうした連動機構にこだわるのは、せっかくある機能なのだから、一度動いているところを見てみたいというメカニズム重視の興味本位で語っているにすぎない。
 F4の場合は、旧来のMFニッコールレンズを使用しても、メーターは当り前のように作動する。しかもAiニッコールのSタイプレンズならば、マルチパターン(多分割)測光も可能だ。これはF5とかF100にはない機能である。Aiになる前のニコンF時代の古いニッコールレンズも、Ai連動爪をハネ上げれば装着することができ、絞り込み測光を使用することができる。
 逆に最近の超音波内蔵のAF-Sレンズも正常にAF作動する。さらに絞りリングの省略されたGタイプニッコールレンズの場合は、少し使用に無理はあるが、プログラムAEとシャッター速度優先AEに対応するので、まったく使えないというわけではない。
 驚くのは、あの超マイナーな試作品みたいなF3AF用の2本のレンズもAFで使用できることだ。これはレンズ内モーター方式を採用したレンズだが、コストを無視したかのような贅沢な設計のために、非常に性能が高いレンズである。
 基本的にはニコンのAF駆動方式はボディ内モーターによるものを基本としているのだが、F4の場合は最新のAF-SとニコンF3用のAFレンズをも同一のボディで使うことができるということが凄い。この設計コンセプトはシロウト考えでも息を飲む思いである。
 現時点で、F4で使うにあたって機能的に大きな制約があるのはVRニッコールレンズの手ブレ補正機構が働かないくらいではないだろうか。
 こうした新旧ボディ、レンズの相互互換性を保つことは、メーカーにとって、技術的にもコスト的にもかなり厳しい要件であることは想像に難くない。
 ボディとレンズの間の電気的な連動のみならず、旧来の機械的なやりとりを行う連動ピンなどを残しておかなくてはならないからである。そういう意味では、F4は面倒見がよいというか、フレキシブルな機能を持っているかなり贅沢なカメラであるといえるのだ。
 実はF4は最近ではまったく人気がない。どこの中古カメラ店でも邪魔もの扱いである。その理由は、古いAF一眼レフということもあろうが、機構的に現行のカメラにとくに劣っているというわけではないし、使っていても問題は感じない。たしかにAFのエリアが中央の一点にしかないとか、連写速度が遅いということを問題にする人もいるのかもしれないけれど、ベテランになるほど、こうした機能というはオマケ的な要素であると考えるものである。

外装はエンジニアプラスチック

 F4が不人気な本当の理由とは、ひとえに外装素材がエンジニアプラスチックだからということなのではないだろうか。?
 新品のうちには半光沢だったものが、使い込むうちに艶が出てきてツルツルになってくる。このヤレた感じはかなり安っぽく、機構的には問題なくても、とても高価なカメラには見えず、大事に所有しようという気概すら薄れてしまうのである。
 プラスチックと金属の強度の差が問題になることは、今ではまったくないのだが、使い込むごとに年輪を経るかのごとく、道具的にまた別の魅力がでてくる真鍮素材の外装とプラスチック外装のカメラの価値観は大きく異なるということは言えるであろう。
 現行のF5の外装が、ほとんど総金属性に戻ったのは耐久性の問題ではなくて、長期間にわたる使用にも、道具的な魅力を保つためだったのではないかと考えられるのである。
 F4が登場した時はAFの黎明期と言ってもよいころで、まだまだプロやアドバンストアマチュアにとってはAFのスピードや精度は、満足の行くものではなかった。
 このためMFで使用するプロのほうが多かったと記憶しているが、入っている機構は不満でも、なるべく使う主義の私としては、AFを積極的に利用しようと考えた。これは試行錯誤の連続であったが、たとえばカメラに向かってくる人物などを連続撮影しても全てのコマにピントが合うのだ。AFもここまで来たかという感想を持ったものだ。
 もっとも依頼仕事の場合には、まわりのスタッフに、AFの作動エラー音などを聞かれてしまうと、信頼を失いかねないので、最初からMFで使用することになるのだが(笑)。
AFセンサーの性能は日進月歩であるから、F4以降に出た入門機みたいな一眼レフカメラのAFの精度のほうが優れているという逆転現象も起こりうるのだが、F4のAFの良いところは、人間の肌のような微妙なグラデーションを持ったものにも比較的AFセンサーの食いつきが良いということであった。つまりポートレート撮影などには適していることになる。
 AFの精度をスポット的に高めれば、逆にエラーが続出ということにもなりかねないから、F4のAFセンサーの大らかさがかえって、良い方向に働いたのでは、と推測することもできる。もっとも、どれだけAFの精度が優秀になったとしても、一般的な撮影では撮影者が確認しなければならないことは、言うまでもない。大事なのは誤測距時の見極め能力なのである。


優れたスピードライト調光精度

あえて説明する必要もないFマウント部分。しかし、あらゆるニッコールレンズに対処しようというその姿勢は立派である。基本形状は1959年から変わっていないはずだが、設計者の英知によって、いまだマウント変更はなされていない。

 

 F4でもっとも驚いたのは、ニコンの専用スピードライトを使用した場合に、TTL自動調光の精度が飛躍的に向上したことである。
 プロの場合は、カメラにスピードライトを取り付けたまま被写体に向けて発光させるという機会はあまりないものだが、それでもルポやドキュメンタリー、記者会見などの取材では、使用が多くなる。F4と専用スピードライトの組み合わせは、とくに日中シンクロなどの難しい撮影条件で、他に類を見ないほど精度が上がった。定常光を測光して加味しつつ、条件によっては定常光よりも弱くストロボを発光させるように制御されているため、条件のマッチングがよいと、まるでレフ板を使用したかのようなフィリンフラッシュ効果が得られるわけだ。
 これまでは日中シンクロ撮影を行う場合は単独露出計に、経験を加味してこれを行っていたのであるが、F4では、ほとんどの条件において、カメラ任せで撮影することができた。シンクロ速度は最高1/250秒であるから、いろんな表現に応用ができたのである。
 これはさらに進化して、現在のデジタル一眼レフに採用されているi-TTL調光となっているが、この分野だけは、いまだニコンの独壇場ともいえる高い精度を持っていることは注目に値するのである。
 F4のもうひとつの良さとは、実際の操作性が旧来のMFニコンのそれを踏襲していることである。シャッター速度設定はシャッターダイヤルで、絞り設定は絞りリングで、という当り前のことが、今ではなんだか新鮮である。
 MF一眼レフカメラ、イコールダイヤルカメラという言い方をする人がいるけれど、現行のデジタル一眼レフカメラにだって、ダイヤルはある。ニコンではコマンドダイヤルという呼び方をするが、肝心なのはその表示方法なのではないか。液晶パネルを見ながら、各種設定を行う方法が主流であるが、これはどうしても数字を「呼び出す」という感覚を持ってしまう。F4のような方式では、ダイヤル上に刻まれた数値をそのまま設定するというダイレクトな感覚に安心感があるわけだ。
 カメラの進歩は操作の自動化と同義であるから、カメラの発展の方向は間違ってはいないだろう。しかし、何となく画一化している感じもする。メーカーごとのデザイン、機能的な差異がほとんど感じられないのである。
 F4のあり方というのは、今では中途半端な存在になるのかもしれないが、旧来からのニコンファンにとっては決して侮れないものがあるのだ。

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