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ミノルタSR-T101
 コニカとミノルタの経営統合でワリを食ったようにみえるのが、肝心のカメラたちなのではないか。今後登場するカメラの新しいロゴは「KONICA MINOLTA」。慣れ親しんだロゴが消えてしまうことにより、旧来のMINOLTAあるいはminoltaファンの中には失望している人もいるのである。
※写真をクリックすると、大きなサイズで御覧頂けます。
 

旧「minolta」ロゴの美しさ

 
ブラックボディはなかなか精悍な雰囲気である。SR-T101は大振りなボディであるが、ブラックのほうが小さくみえる。装着レンズはMCロッコール21mmF2.8。いかにもレトロフォーカスタイプといった赴きのあるレンズで、大きく重いけれど、デザインがよい。最後期のモデルにはミラーアップノブが省略されたモデルもある。   SR-T101の底面。ここにメーターのスイッチがあるのは変わっている。電源はMR-9水銀電池なので、今では入手できないが、市販のアダプターを使えば作動は問題ない。
  私がこだわっているのは古い「minolta」のロゴがついたカメラである。何よりも見慣れているということもあるけれど、たとえば二眼レフのオートコードには、このロゴが掲げられているだけで金看板という感じすらするし、35ミリMF一眼レフSR系ボディにも、しっくりくる。
 このロゴは最終的には、あの宮崎美子がCMに登場した(古い!)普及モデルX-7あたりまで使われていたはずだ。
 今でも根強い人気のあるAEレンジファインダー機CLEが登場とともに(1981年)にロゴは大きく変わる。たしかフォトキナにおいて展示されたCLEは、旧ロゴだったはずだ。
 その後の市販機のCLEでは新しいタイプのものに切り替わっている。AF一眼レフシステムであるαシリーズではすでにお馴染みであるが、これはまあ時代の変わり目という意味もあるし今では違和感も感じることはない。
 81年当時でも、ロゴのデザイン変更はすぐにはユーザーに受け入れられなかったようで、私のまわりでも様々な論議をというか陰口が叩かれたりしていた。今回の名称変更同様、私自身も受け入れるのに時間がかかった。
 今回の変更もそうだが、どうもミノルタのカメラにはロゴデザインの変更が論議を呼ぶという運命がつきまとうのであろうか。もっとも、1950年代のミノルタのカメラでは、しょっちゅうロゴの変更は行われていた。幻の本格的なレンジファインダーカメラ、ミノルタスカイには、まったく新しいデザインのロゴが採用されるはずだったのである。
 「minolta」旧ロゴのついたカメラで最も好きなのは、ミノルタのMF35ミリの代表的な一眼レフカメラであったSR-T101である。今回はこの話である。
メカニカルの魅力

裏蓋部分にあるフィルムインジケーター。覚え書き程度のもので、メーターとは連動していないが、どことなくM型ライカのものと似ているのが面白い。フィルム感度のレンジが広くとられているのもよい。
 完全なメカニカルカメラのもつ雰囲気というのは、今では独自のものが感じられるし、精密機械としてのカメラの魅力に溢れている。どれほど高価なデジタル一眼レフにあっても、こうした充実感があるものはないし、今後も望み薄であろう。私たちはカメラに対する概念をそろそろ改めねばならない時期にきているのかもしれない。
 SR-T101はけっしてスマートなほうに属するカメラではないし、どちらかと言えば不格好と言っても良い。けっこうな重量級カメラなので、非力な私は今では持ち出す場合には覚悟を決めなければならないほどだ。とりたてて高機能な仕様のカメラではないのでなおさらである。カメラの発展と共に、人間のほうも軟弱になってしまったのかもしれない。
 外装のカバーは相当に肉圧で、これが重量を増している原因ともなっているようだが、その堅牢性は抜群で、他のカメラと一緒に首に下げて携行して、ぶつかりあった場合など、勝つのは必ずSR-T101のほうであり、一方のカメラのほうが凹んでいたりする。
 一見、鈍重な感じもしなくはないのだが、実際の操作性が非常によいため、手にしてみるとそうは感じないし、意外なことに感触に繊細さも感じる。これは機械的な工作精度が優れていることを意味している。

無骨だが魅力あるデザイン

変わったネーミングのSRだが、これはSR505の海外版モデルで仕様は同一である。韓国はソウルの露店商のようなカメラ店で入手したものだが、驚くほど廉価だった記憶がある。装着のMCロッコール58mmF1.2は非常によく写る大口径標準レンズである。このレンズは一時よりもかなり廉価になって、入手しやすくなった。

 デザイン的には、ペンタプリズムのカタチにとくに惹かれる。SR-T101の普及機、SR-1Sのほうがはるかにスマートである。マルチモード機に名をはせたXDのデザインは、このSR-1Sのデザインも大きく影響を受けたとエンジニアから聞いたことがある。当時はTTLメーターを内蔵するだけで、相当なスペースが必要だったのかもしれない。
 SR-T101の登場は66年である。TTL開放測光を採用した一眼レフカメラとして先進性をみせている。
 SR-T101用のレンズとして登場したMCロッコールレンズには、TTLメーター連動用のメーターカップリング用のピンがあることが外観からわかる。これはニコンに似たような感じを受けるけれど、レンズ装着時にはニコンとは異なり、カメラ側に開放F値を知らせる作業が必要がないのも便利であった。
 それより以前のレンズは絞り込み測光によって対応するから、これも問題はなかった。


独自の分割測光

SR-T101の改良版で、ホットシューが採用されている。ミラーアップ機構は省略された。他の機能はSR-T101と同じだが、機械的な作動感触は良くなっているように思える。MCロッコール58mmF1.4はかなり古いものだが、モノクロでは個性ある描写性能があり気に入っているレンズだ。

 SR-T101で注目すべきはCLC(Contrast Light Compensator)方式と呼ばれる2分割の測光方式が採用されていることだ。
 単純な2分割であるから、横位置撮影時に空の影響を受けて露光不足にならないように考えられているものであって、最近の複雑な多分割測光とはまったく異なるし、内蔵CPUで高速演算処理して、というものでもないのだから、悪い言い方をしてしまうと、どことなくアバウトな感じもする。
 しかし、なかなか良いアイディアであったと思うし、実際の露出傾向、精度も立派なものである。ただし、理屈からすれば縦位置の時は機能しないことになるわけで、これに対するミノルタ側の公式見解は出ていないようだ。しかし、縦位置にしたからといって、露出が狂うわけではないし、今でも立派に実用として通用する精度があるのは嬉しいことだ。メーター表示は追針式で、視野内にあるが、とても使いやすい。
 ファインダースクリーンは明るくはないし、マットのキレも今ひとつの感があるが、これはピント合わせの練習を積むことで解決できる。昨今のAF一眼レフのむやみに明るいだけのファインダーよりもリアリティがあることとは確かである。
 中央にはマイクロプリズムがあるが、プリズムの角度が考えられているためだろうか、F値の大きいレンズでも対応できるのはありがたい。


モードラは特殊装置

 モータードライブとかワインダーなどに対しては、当時もっとも遅れていたほうに属するミノルタだけに、SR-T101には用意はされていないわけだが、これはやむをえないところであろう。
 なにせ、その後においても70年に登場するSR-Mはモーターの脱着できない専用カメラとして開発されたし、73年のフラッグシップ機X-1でも、X-1モーターというモーター内蔵の専用カメラを別に用意したのだ。
 モーターは脱着式でなく、固定式で取り外すことができず、通常のボディにはアクセサリーとして用意されないこれだけの徹底ぶりには硬直した思想を感じるが、このころは、まだモーターによるフィルム自動巻き上げ装置は特殊なものと考えられていた証なようにも思えるし、モーターを使うからには、専用設計ボディを用意し、徹底した堅牢性を維持するのだ、という気概のあらわれともみてとれる。
 SR-T101使い心地はなかなかよい。何せシリーズを総計すると100万台以上も売られたと言われているので、生産ラインの熟成度合いが、そんじゃそこらのロングセラーカメラとは比べものにはならない。長く売られたカメラなので、途中、色々と改良された跡を見てとることもできる。
 フィルム巻き上げレバーのトルクなどは、初期製品と後期のものでは大きく異なるとも言われているが、しっかりとした作動感触を得ることができ、これだけでも強い信頼性を感じるくらいである。
 ただし、SR-T101のシャッター音はことのほか大きく感じる。とくにデジタルカメラが席巻する昨今では、これだけの大きい作動音のするカメラもないから、街中で撮影していると、すれちがう人が警戒して、こちらを振りかえるほどである。スナップ撮影などでは困ってしまうのだが、音質的には悪くはないのが救いで、いかにも人間の英知を結集した機械じかけのシャッターが走っているという印象すら与える。
 73年にはSR-T101にホットシューと、ファインダー内に絞り情報表示を追加したSR-T SUPER、最終的に75年に登場のSR-T101の改良型であるSR101、SR-TSUPER に改良型SR505に続くわけだ。74年には、絞り優先AEを装備し、人気機種となったXEとも同時に売られていた時期もあるので、メカニカルカメラとしての存在意義はたいへん大きいものであったといえるのである。

ユージン・スミスの愛機

SR-1に1/1000秒が追加されたモデル。TTLメーターが省略されたSR-T101の普及機的存在だがデザインは抜群である。小型軽量なのもありがたい。装着レンズはロッコール21mmF4。ミラーアップが必要な対称型レンズ。これも描写能力が非常に高く感心させられる。

 ミノルタSR系ボディの使い手として、もっとも有名なのはユージン・スミスである。日本取材の折に愛用のライカを盗まれ、困っていたスミスのことを知ったミノルタは機材の無償貸与を行い、手厚く取材のためにサポートしたのであった。あの有名な『水俣』の作品の多くはSR系カメラで撮影されている。
 当時のスミスの取材時のポートレートをみると最高で7台(!)ものSR系ボディを体からぶら下げていたりする。
 これだけ台数が多いと千手観音でもなければ全部のカメラを操作するのは難しいであろう。最初はこれはミノルタの宣伝のためにわざとそうしているのかと思ったら、どうやらそのスタイルが自然らしいことが後にわかったが凄いことである。
 もっとも刻々と状況が変化するような撮影現場では、レンズ交換の時間が惜しいから、このような撮影スタイルになったのだろう。それにしても、個々のカメラのフィルムの残数を覚えていられるものなのだろうか?常人のワザではないような気がするのだが、スミスくらいの天才になれば、ごく当り前のワザだったのだろうか。
 「レンズの味」がどうのとかシャッター音がどうのとかいうことを重要視する私のような極悪な写真家と異なり、スミスはしごく真っ当なフォトジャーナリストであることは言うまでもないが、ひとつだけ興味を持ったエピソードがある。
 『カメラ毎日』の記事だったと思うが、当時の助手であった写真家の森永純氏が、スミスが1枚の作品を完成させるのに、100枚の焼き直しはザラということを述べていたのを読んだ記憶がある。スミスは完全主義者であることを示しているエピソードだが、そのベースとなるための道具であるミノルタSRの性能が、ロッコールレンズの描写力が、スミスの信頼に耐えうるものでなかったならば、いくらミノルタが厚いサポート体制を引いたところで、スミスはミノルタを使うことはなかったのではないか。何せ、自分の主張を曲げないことで有名なスミスはライフの仕事をも断ってしまうような強情なタイプの写真家であったから、ダメなものはダメと言うに違いない。カメラの機能に対しては多くを求めることはなかったと思うが、スミスから文句をつけられることのなかったカメラを作っていた、ミノルタの技術的信頼度は高かったのである。
 若き日に、ミノルタのSRを下げたスミスのポートレートを見た私はかなり興奮して、それからはミノルタのカメラに一目置くようになったことはたしかである。つまり、少なくとも熱心なカメラ少年に対しては、広告宣伝効果は大きかったのである。
 SR系カメラは台数が多いために、いずれも価格がこなれているのはありがたい。程度を選ばなければ、晩酌代くらいで入手できる可能性もある。私も最初はほんのお遊びと思って手を出したのであるが、その魅力を知って、続々とSR系ファミリーが増殖してしまう結果となった。

生き残るSR

 実は、私のお気に入りのミノルタMF一眼レフはXDなのだが、この20年の間、故障するたびに買い替えて、これを使い回してきた。その数は5台は下るまい。しかし、最近、最後まで所有していたボディが壊れてしまい、ついに修理不能となってしまった。再度使えそうなXDを捜してはいるのだが、なかなか気に入った個体を手にすることができないので、もうそろそろ諦めようと思っているところなのである。このあたりに電子シャッターの限界があるのだろう。
 XDと同じ期間使用しているのに、動作の問題なく作動しているのは、やはりメカニカルカメラであるSR系機種である。こういうエピソードは自分の中でもカメラの信頼度を測るバロメーターとなるわけだ。
 SR系カメラでも、完全に壊れてしまうとさすがにメーカーでの修理は難しいようだが、カメラ修理専門会社では今でも各種調整を受け付けてくれるし、ほとんどの場合は復活させることが可能である。
 各種のロッコールレンズも特殊なものを除けば以前よりも、ずっと入手しやすくなったのも嬉しい。ロッコールレンズは個人的にはモノクロ再現が気に入っている。
 ただし、これは構造的な問題であろうが、絞り連動機構が経年変化によって、作動不良になりやすいのが悩みである。実際に使っていれば、この問題は出にくいのだが、とくに製造年代の古いレンズなどでは、長期保管時の後に使用する場合など、撮影前には絞り作動の確認をするなど注意が必要である。

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